
中東の国々に行くと、まず驚くのが食事のときのルールや作法の違い。観光やビジネスで訪れたときに、うっかりマナー違反してしまった…なんてことも。結論から言えば、中東の食事マナーには「宗教的な慣習や文化的価値観」が深く根付いているんです。 だからこそ、ただの形式じゃなくて、信仰や敬意の現れとして大切にされているんですよ。今回はそんな中東の食事マナーについて、ポイントを押さえて解説していきますね。
まず何よりも押さえておきたいのが「右手ルール」。中東では、イスラーム文化の影響から、右手が清浄な手、左手が不浄な手とされています。
パンや肉などを手で食べるときは、必ず右手を使うのがマナー。フォークやスプーンを使うときも、なるべく右手が主になるようにしましょう。左手で直接食べ物を取るのは、かなりのマナー違反と受け取られることがあります。
国や家庭によっては、スプーンを使わずに手で食べるスタイルが今も主流。特にアラビア半島やインド寄りの地域では、指を使って器用にごはんをすくう文化が残っています。
中東ではイスラーム(イスラム教)が広く信仰されており、その戒律が食生活にも強く影響しています。
イスラム教の教えでは、豚肉と酒は禁忌です。これは個人の好みの問題ではなく、信仰に関わる重要なルール。レストランなどでも、豚肉料理はほとんど見かけませんし、アルコール提供の有無も要確認です。
「ハラール」とは、「許されているもの」という意味で、イスラム法に則って処理された食材のこと。肉類は特に厳格に管理されており、イスラム教徒の人と食事を共にするなら、ハラール対応かどうかに注意しましょう。
イスラム暦のラマダーン月(断食月)には、日の出から日没まで断食(サウム)を行う信者が多くいます。日中の飲食を控える人たちに配慮した行動が求められます。
ラマダーン期間中、公共の場で食べたり飲んだりするのは、たとえ外国人であってもマナー違反とされることが多いです。観光地では大目に見られる場合もありますが、基本的には周囲の様子をよく見て判断を。
日没後に行われるイフタールは、断食明けの食事で、家族や友人と共にテーブルを囲む大切なひととき。もし招待されたら、丁寧な感謝の気持ちを伝えるのがポイントです。
中東の人々はとてもホスピタリティに厚く、ゲストをもてなすことを誇りにしています。ただし、そこには独特のルールもあるので、ちょっと注意が必要です。
「もっと食べて」と何度もすすめられるのが普通。遠慮しすぎると「気に入らなかったのか?」と受け取られることもあるので、少しだけでも応じるのが礼儀です。
場所によっては、全部平らげると「まだ足りなかったのでは?」と思わせてしまうことも。適度に残すのがマナーとされることもあるので、周囲の様子をよく観察しましょう。
細かいところではありますが、知っておくと気配りとして喜ばれる中東ならではのマナーもあります。
足の裏を人に向けるのは大変失礼とされます。正座やあぐらをかくときも、できるだけ足が人に向かないよう意識しましょう。
1日5回の礼拝(サラート)の時間には、お店が一時的に閉まったり、食事中に中断されることもあります。これは信仰の一部なので、驚かず静かに見守るのが◎。
中東の食事マナーは、形式的な作法以上に、宗教的な信念や文化的な敬意が深く関わっているんです。だからこそ、「なんとなく」ではなく、背景を理解したうえで接することが大切。相手の大事にしている価値観に寄り添うことが、もっとも美しいマナーなのかもしれませんね。