南アジアと聞くと、豊かな文化や歴史、活気ある都市が思い浮かぶかもしれません。でも、実はこの地域、世界でも有数の大気汚染地帯でもあるんです。特にインド、バングラデシュ、パキスタンでは、PM2.5の濃度が非常に高く、健康被害が深刻化しています。 ある研究では、これらの国々での大気汚染が原因で、死亡率が他の地域よりも高いことが示されています。

 

さらに、大気汚染は健康だけでなく、ヒマラヤ氷河の融解を加速させるなど、環境全体に悪影響を及ぼしています。 このような状況を受けて、各国政府や国際機関は対策に乗り出していますが、課題は山積みです。

 

この記事では、南アジアの大気汚染の主な原因と、それに対する対策について詳しく見ていきます。

 

 

南アジアの大気汚染の主な原因

南アジアの大気汚染は、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。以下に主な原因を挙げてみましょう。

 

 

家庭でのバイオマス燃料の使用

多くの家庭では、調理や暖房に木材や動物の糞などのバイオマス燃料を使用しています。 これらの燃料は不完全燃焼を起こし、PM2.5やブラックカーボンなどの有害物質を大量に排出します。 ある調査によれば、南アジア地域におけるPM2.5汚染の約40%が、家庭での固形燃料の使用に起因しているとされています。

 

産業活動による排出

急速な経済成長に伴い、工場や発電所からの排出も増加しています。 特に石炭を燃料とする施設では、二酸化硫黄や窒素酸化物などの汚染物質が大量に放出され、大気汚染の一因となっています。

 

交通機関からの排気ガス

都市部では、車両の増加により排気ガスが深刻な問題となっています。 特に古いディーゼル車からは、PM2.5や窒素酸化物が多く排出され、都市の大気質を悪化させています。

 

農業における野焼き

農業の一環として行われる野焼きも、大気汚染の原因の一つです。 収穫後の作物の残渣を焼却することで、PM2.5や一酸化炭素などの有害物質が大気中に放出されます。

 

煉瓦窯からの排出

南アジアでは、伝統的な煉瓦窯が多く存在し、これらからの排出も大気汚染の要因となっています。 煉瓦窯からは、ブラックカーボンやPM2.5が大量に放出され、地域の大気質を悪化させています。

 

気候変動による影響

大気汚染は、気候変動とも密接に関連しています。 例えば、ブラックカーボンは氷河の融解を加速させ、水資源の枯渇や洪水のリスクを高めています。 世界銀行の報告によれば、ブラックカーボンの排出を削減することで、ヒマラヤ氷河の融解を抑制できるとされています。

 

南アジアにおける大気汚染対策

南アジア各国では、大気汚染対策としてさまざまな取り組みが行われています。

 

クリーン燃料への転換

家庭でのバイオマス燃料の使用を減らすため、液化石油ガス（LPG）や電気調理器への転換が進められています。 インド政府は、貧困層へのLPG補助金を提供し、バイオマス燃料の使用削減を図っています。

 

産業排出の規制強化

工場や発電所からの排出を抑制するため、排出基準の強化やクリーン技術の導入が進められています。 例えば、中国では発電所での硫黄規制や自動車排出基準の導入により、二酸化硫黄や窒素酸化物の排出削減が実現されています。

 

交通政策の見直し

都市部の交通渋滞や排気ガスの問題に対処するため、公共交通機関の整備や電気自動車の導入が進められています。 また、古いディーゼル車の廃車促進や排出基準の強化も行われています。

 

農業慣行の改善

野焼きによる大気汚染を防ぐため、農業廃棄物の再利用や堆肥化の促進が行われています。 また、農家への教育や支援を通じて、持続可能な農業慣行への転換が図られています。

 

煉瓦窯の近代化

伝統的な煉瓦窯の排出削減のため、効率的な技術への転換が進められています。 例えば、垂直シャフト煉瓦窯などの導入により、燃料効率の向上と排出削減が期待されています。

 

国際的な支援と協力

日本政府は、バングラデシュの主要都市における大気汚染の測定局の整備を支援しています。 これにより、自動車排ガスによる大気汚染物質の測定と分析能力の強化が図られています。