
インド、パキスタン、バングラデシュを中心に構成される南アジア地域。この場所は、古代文明の誕生から現代の国家形成まで、まさに歴史の舞台装置とも言えるような変遷をたどってきました。南アジア社会の歴史的背景を理解するには、「文明の始まり」「宗教と王朝の盛衰」「植民地化と独立闘争」「現代国家の成立」という4つの時代をおさえるのがカギなんです。今回はそれぞれの時代ごとの特徴をお話ししたあと、最後にパッと見て流れがつかめるような年表もつけておきますね。
南アジアの歴史は、世界最古級の文明のひとつであるインダス文明からスタートします。この時代、すでに都市が整備され、下水道や計画都市があったなんて、ちょっと驚きですよね。
紀元前2600年ごろに登場したインダス文明は、モヘンジョダロやハラッパーといった都市遺跡で有名です。ただ、この文明は紀元前1900年ごろに突如として衰退。気候変動や洪水、貿易の崩壊などが原因と考えられています。
その後、北西からアーリヤ人が移住し、インド北部に定住。彼らが残したのが「リグ・ヴェーダ」などのヴェーダ文献で、これが後のヒンドゥー教の基礎になっていきます。社会はカースト制度(ヴァルナ)によって秩序づけられていったんです。
古代〜中世にかけて、南アジアにはさまざまな王朝が興亡し、仏教・ジャイナ教・ヒンドゥー教・イスラム教といった宗教が複雑に交差していきます。
紀元前3世紀ごろに登場したマウリヤ朝は、特にアショーカ王で有名。仏教を篤く信仰し、各地に仏教を布教したことで「世界宗教」として広まっていきました。
その後、4〜6世紀にかけてグプタ朝が栄え、サンスクリット文学や美術、数学などが花開きました。十進法やゼロの概念もこの時代の産物なんですよ。
13世紀以降はイスラム王朝が次々と興隆し、最終的に16世紀にはムガル帝国が成立。タージ・マハルのような壮麗な建築物を残し、イスラム文化とヒンドゥー文化が融合していきました。
近代に入ると、南アジアはヨーロッパ列強の植民地となり、特にイギリスによる影響が絶大でした。政治・経済・教育・言語など、現代社会の枠組みもこの時代につくられていきます。
最初は貿易会社として入ってきたイギリス東インド会社ですが、次第に軍事力で領土を支配し、19世紀にはほぼインド全土を掌握していました。
1857年にはインド大反乱が起きますが、鎮圧されて、イギリス女王による直接統治が始まります(インド帝国の成立)。このころの政策は、分断統治と呼ばれ、民族や宗教の対立をあえて利用する手法もとられました。
20世紀に入ると、独立を求める動きが加速します。中でも有名なのがマハトマ・ガンディーの非暴力・不服従運動ですよね。長い闘争の末、ようやく南アジアは植民地のくびきから解き放たれます。
1947年、宗教対立を背景にインドとパキスタンが分離独立。ただ、このとき多くの人々が移住を余儀なくされ、暴動や犠牲者も多数出ました。
1971年には東パキスタンがバングラデシュとして独立。これは言語や民族の違いから生じた対立が背景にあります。
現在の南アジアは、経済成長と同時に、貧困・教育格差・宗教対立・環境問題など、多くの社会課題にも直面しています。
年代 | 出来事 |
---|---|
紀元前2600年頃 | インダス文明の興隆(モヘンジョダロ・ハラッパー) |
紀元前1500年頃 | アーリヤ人の移住、ヴェーダ時代の開始 |
紀元前3世紀 | マウリヤ朝、アショーカ王による仏教布教 |
4〜6世紀 | グプタ朝の栄華、古典文化が発展 |
13世紀 | デリー・スルタン朝成立 |
1526年 | ムガル帝国がインドに成立 |
1757年 | プラッシーの戦い、イギリス東インド会社の支配拡大 |
1857年 | インド大反乱(シパーヒーの反乱) |
1858年 | イギリス直轄支配が始まり「インド帝国」成立 |
1947年 | インドとパキスタンが分離独立 |
1971年 | バングラデシュがパキスタンから独立 |
歴史を知ることで、今の社会の成り立ちや課題もぐっと見えてきます。南アジア社会の歴史は、「宗教・王朝・植民地・独立」という大きなテーマが連なってできているんですね。今後この地域で起こる出来事を見るときも、「それってどの歴史的背景からきてるのかな?」って視点をもつと、すごく深く理解できると思いますよ。