
虹って、空にふわっと現れると、なんだかいいことありそうな気がしちゃいますよね。でも、みんなが「虹って七色だよね〜」って思ってるのは、実は当たり前じゃないんです。南アジアの先住民族バイガ族の人たちは、虹を「赤と黒の2色」だと見ているって聞いたら、びっくりしませんか?
え? 虹が2色? 赤と黒?って思うかもしれませんが、そこには彼ら独自の文化的な色の捉え方があるんです。今回はそんなバイガ族の虹観を通して、色と文化の関係をちょっと覗いてみましょう。
まず最初にお伝えしたいのが、「虹=七色」は日本だけの認識じゃないけど、実は世界の共通認識でもないってこと。国や文化によって、虹の色の数も見え方もけっこう違うんです。
日本では「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の七色が当たり前。でもアメリカでは6色、ドイツでは5色、中国では3色とする場合もあるんです。これは科学的な見え方というより、「色をいくつに区切って認識するか」という文化的な感覚に左右されているんですよ。
ちなみに七色って考えたのは、17世紀のアイザック・ニュートン。でも彼は光のスペクトルを、当時の音楽の音階(ドレミファソラシ)に合わせて7つに分けただけという説もあって、「科学的に厳密に7色見える」という話とはちょっと違うんです。
ではここからが本題。南アジア、特にインド中部に暮らすバイガ族(Baiga)という先住民族の人たちは、虹を見たときに「赤」と「黒」の2色が見える、と考えています。
実はこの2色というのは、「明るい色は全部赤」「暗い色は全部黒」みたいに色を大まかに2種類にまとめる、という彼らの色彩感覚に基づいているんです。バイガ族の言葉には、私たちのように細かく色を表現する言葉がなくて、色を明暗の違いでざっくり分ける傾向があるんですね。
これは「言語が思考や知覚に影響する」っていう、言語相対論(サピア=ウォーフの仮説)で説明できる考え方でもあります。つまり、赤や黒以外の色も見えてはいるけれど、それを言葉として認識していないから「2色」と答えるわけです。
興味深いのは、バイガ族にとって虹は信仰や神話の対象ではないという点。彼らにとって虹は自然の一部であり、ただ「そこにあるもの」として受け入れられているんです。
バイガ族は、インドのマディヤ・プラデーシュ州やチャッティースガル州の森に暮らし、農耕や狩猟採集を通じて自然と共生してきた民族です。だからこそ、虹に対しても「自然現象のひとつ」として、飾らず、特別視せずに接しているんですね。
虹を見て「これは神のサインだ!」と騒ぐのではなく、「ただそこにある」と捉える姿勢は、自然と調和して生きる彼らの世界観を感じさせてくれます。
バイガ族の虹の話からは、「見えているもの」と「見えていると認識しているもの」の違いに気づかされます。私たちが虹を七色と思うのも、子どものころにそう教わったからで、言い換えれば「文化的に七色だと思わされている」わけなんですよね。
この話、子どもたちにも教えてあげたいですよね。「世界には虹が2色に見える人もいるんだよ」って話すことで、「世界は自分の知ってるものだけじゃない」っていう広い視野を持てるようになると思います。
見え方って、目だけで決まるんじゃなくて、言葉や価値観が大きく関わってくる。虹の話は、そんな「文化が感覚をつくる」ってことを、やさしく教えてくれる話なんです。
虹って空に出るきれいなアーチだけど、それが何色に見えるかは、その人の文化や言葉によって変わるんですね。バイガ族にとっての「赤と黒」の虹は、ただの視覚現象じゃなくて、彼らの暮らしや世界の感じ方を映す鏡みたいなもの。七色に見える世界が全てじゃないって思うと、自分の感覚をちょっと外から眺めるきっかけになるかもしれませんね。