中東の経済

中東は天然のエネルギー資源が豊富な地域です。中東諸国の多くは、産業構造を天然資源の輸出に特化している、いわゆるモノカルチャー経済であり、日本含め、世界中の国が石油輸入の大半を中東に依存しています。

 

中東経済の問題点

石油価格が下落する中、歳入のほとんどを石油に依存しているような国(例:サウジアラビア)は財政難に苦しんでいます。いくら天然資源に恵まれていても、輸出で得たお金を自国産業の育成に使わないと、経済は中々上向きません。その為モノカルチャー経済の国は、将来エネルギー資源が枯渇した時に備え、ITなど他産業の育成に力を入れる必要があります。

 

子供の貧困

ユニセフ(国連児童基金)が中東・北アフリカ地域11カ国を対象に実施した調査によれば、子供の4人に1人が貧困状態にあることがわかりました。

 

中東・北アフリカ 子どもの貧困、2900万人 - 日本ユニセフ協会

 

中東の多くの子供が教育・住居・食事・衛生面などで最低限の基準を満たさない状況に置かれており、こと教育の欠如はさらなる貧困を推し進める悪循環を生んでいます。
教育を受けていない家庭で育つ子供は、そうでない家庭で育つ子供と比べ、貧困で在り続ける可能性が2倍も高いそうです。生まれた環境によって子供達の将来が大きく左右されてしまうのです。

 

貧困から抜けられない原因

中東は昔から宗教や民族対立が絶えない地域。せっかく生んだお金も武器を買うのに使ってしまい、教育に回すお金が足りなくなってしまうのです。紛争が激化しているイラクやシリアでは、300万人が教育を受けられない状況に立たされています。利権の独占、富の分配という観念がない国の指導層、政治家の怠慢など政治的要因も大きいといわれています。

 

中東でも裕福な国

中東でもカタールやクウェートのように情勢が安定している国は、豊富な天然資源の恩恵を受け、むしろ裕福な経済状況にあります。
特にカタールは、日本の秋田県くらいの面積で、人口200万人程度の小さな国ですが、「世界一裕福な国」とも言われています。

 

カタールの経済事情
  • 国民1人あたりのGDPは日本に2倍近く。
  • 国民の大半が公務員で、平均年収は500〜600万。
  • 石油、天然ガスなどの資源が豊富で非常に潤っており、所得税や消費税の徴収がない。
  • 電気や水道などの光熱費、病院などの医療費、幼稚園から大学までの教育費などが無料。

 

収入が高くても税金が飛び抜けて高いなどというオチはありません。必要分は中東における豊富な天然資源という後ろ盾でまかなっています。これは日本には出来ないことです。

 

中東の人口

中東という地域概念は一定のものではありませんが、西アジア地域の国々(アフガニスタン以西)+北アフリカ地域のイスラム国家を中東とした場合、そこにはヨーロッパ全体の人口と同じくらいの約5億人の人々が住んでいます。世界的に人口は増加傾向にありますが、中東の人口増加率は特に高く、クウェート、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンなどは特にその傾向が顕著です。

 

人口増加の要因

第一に出生率の高さがあり、中東では子供の死亡率が高い分、たくさん生もうという考えが根強くあるのです。その為、豊かな国ほど人口は少なく、人口が多い国は貧しい傾向にあります。
出生率の高さだけでなく、UAEやカタールのように経済が活況な国は、外国人労働者を次々と受け入れており、これも人口増加の一因になっています。

 

人口増加の問題

人口は豊かさと相関関係にありません。特に中東の乾燥帯気候では農業生産性が悪いので、人口が増えすぎた国では食糧の供給が追いつかず、慢性的な飢餓状態を招くのです。
パキスタンは中東における多人口国家の一つですが、人口約1.9億人のうち1日2ドル未満で暮らす貧困層は国民の半数を超えています。
十分な教育を受けられず、仕事が見つからない若者がテロ組織の活動に加わってしまうことも社会問題となっています。