
シリアの国旗
出典:Wikimedia Commonsより
国の基本情報 |
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国名 | シリア(Syria) ※正式名称:シリア・アラブ共和国 |
首都 | ダマスカス(Damascus) |
人口 | 約2,200万人(2024年推計)※内戦による変動あり |
面積 | 約185,000平方キロメートル |
公用語 | アラビア語 |
通貨 | シリア・ポンド(SYP) |
政治体制 | 共和制(事実上の権威主義体制) |
主要宗教 | イスラム教(スンニ派主体)、アラウィー派、キリスト教など |
国際的地位 | 内戦と難民問題で国際的注目を集める。多くの国との外交関係が断絶中 |
建国背景 | フランスの委任統治領から1946年に独立。1963年以降バアス党が実権を握り、現在はアサド大統領による長期統治が続く。2011年から内戦状態。 |
シリアという国名を聞いて、まず思い浮かぶのは「内戦」「難民」「イスラム過激派」など、ここ数十年で報道されてきた暗いニュースかもしれません。でも、本当はこの国、人類文明のゆりかごのひとつであり、何千年もの歴史と多様な文化が交錯してきた交差点なんです。今回は、そんなシリアの「本当の姿」を、歴史・地理・文化・政治・現代社会の切り口から、まるっと紹介していきます!
シリアは西アジア(中東)に位置し、北はトルコ、東はイラク、南はヨルダン、西はレバノン・イスラエルと接しています。地中海にも面していて、地政学的にめちゃくちゃ重要なポジションにある国です。首都はダマスカス、人口は約2,200万人(ただし、内戦による難民流出で変動あり)。
海沿いは地中海性気候でわりと温暖ですが、内陸部は乾燥した砂漠気候です。水資源は乏しく、ユーフラテス川が重要な命綱。農業地帯は川沿いに集中しています。
シリアはアラブ人が多数ですが、クルド人・トルクメン人・アルメニア人なども共存。宗教はイスラム教(スンナ派・シーア派・アラウィー派)が中心ですが、キリスト教徒も古くから存在し、かつては宗教のモザイク国家とも言われていました。
今のシリアを理解するには、まずはこの土地が人類史の舞台としてどれほど重要だったかを知る必要があります。
紀元前3000年ごろ、エブラ王国やウガリットなど、初期国家がこの地で栄えました。フェニキア人やアッシリア帝国、そして後にはアレクサンドロス大王やローマ帝国にも支配され、まさに「文明のるつぼ」だったんです。
7世紀にイスラム教が広がると、シリアはウマイヤ朝の首都ダマスカスとなり、イスラーム世界の中心地に。交易、建築、学問の分野で世界的な影響を与えました。
1516年からはオスマン帝国の支配下に入り、第一次世界大戦後はフランスの委任統治領に。1920年代には独立運動が高まり、1946年にシリア共和国として正式独立を果たしました。
独立後はクーデターが頻発し、政権が安定しない時期が続きます。1963年にはバアス党が政権を掌握し、社会主義的な独裁体制がスタート。1971年からはハーフィズ・アル=アサドが大統領となり、その後息子のバッシャール・アル=アサドが2000年に権力を引き継ぎました。
2011年、「アラブの春」の波がシリアにも及び、民主化を求めるデモが拡大。これに対する政府の武力弾圧が内戦の火種になりました。
シリア内戦は政府軍・反政府勢力・IS・クルド民兵・外国勢力が入り乱れる多層構造の戦争に発展。特にイスラム国(IS)の台頭と、ロシアやイランの軍事介入、アメリカやトルコの介入が状況をさらに複雑にしました。
内戦によって数百万人が国外に脱出し、「世界最大規模の難民危機」とまで言われるほど。多くはトルコ・レバノン・ヨルダン、さらにヨーロッパへと逃れています。
2020年代に入ってもバッシャール・アル=アサド政権は健在ですが、国家の統治能力は一部地域に限定され、経済崩壊・インフラ破壊・国際的孤立といった深刻な課題が残ったままです。
戦争のイメージが強いシリアですが、もともとは多宗教・多民族の共存が可能だった豊かな文化圏なんです。
スンナ派が多数派ですが、シーア派の一派アラウィー派が政権中枢を握っています。さらにキリスト教徒、ドゥルーズ教徒、ヤズディ教徒なども古くから暮らしていて、宗教のモザイク国家と呼ばれていたほど。
かつてはパルミラ遺跡やアレッポ旧市街など、世界遺産も豊富でした。内戦で多くが損壊してしまったものの、その価値は今も大きな遺産として評価されています。
アラブ文化の中心のひとつだったシリアでは、詩や音楽の伝統も深く、ウード(中東の弦楽器)の音色や古典詩の朗読が日常に根付いていました。料理はフムス、クッバ、シャワルマなどレバント地方共通の味が中心です。
シリアという国をただ「内戦の国」として見るのはもったいない。この地には、文明の原点があり、豊かな宗教・文化の共存の歴史があり、今もそれを守ろうとする人々の営みがあるんです。今は傷ついていても、その根底にある強さと多様性は、これからの未来への希望でもあるのかもしれません。