
南アジアと聞くと、活気あるマーケットやIT産業の成長、歴史ある街並みを思い浮かべる人も多いかもしれません。でも一方で、この地域には根深い貧困の問題が今も残っています。特にインド、パキスタン、バングラデシュなどでは、急成長の陰で地域格差や社会的な分断が広がっているんです。
南アジアの貧困率が高い主な原因は、農村部の教育・保健インフラの遅れや都市との経済格差、そして就労機会のミスマッチにあります。
まずはデータで見てみましょう。貧困率は確実に下がってきていますが、まだまだ安心はできません。
極度の貧困率(1日1.9ドル以下)は以下のように推移しています。
新型コロナの影響で一時的に悪化したものの、全体としては経済成長と社会改革によって改善の兆しが見えています。
実は、世界全体の極度の貧困層の約4割が南アジアに集中しているんです。特に農村部では、教育・医療サービスが不足していて、構造的に貧困から抜け出せない人たちがたくさんいます。
数字だけではわかりにくいですが、いくつかの大きな理由があります。1つひとつ紐解いてみましょう。
南アジアの人口の多くが農村部に住んでいて、そこでは学校や病院が遠い・足りない・古いという問題があります。子どもたちが教育を受けられないと、大人になっても技能がなくて安定した仕事につけないという負のループに…。
インドやバングラデシュでは、都市部の経済はグングン成長していますが、農村では伝統的な生活のまま取り残されている地域が少なくありません。水道もインターネットも通っていない村もあります。
都市部の若者たちは大学で勉強するようになったけれど、卒業しても職がないという事態が増えています。企業が求めるスキルと教育内容がずれているため、「高学歴なのに無職」という若者も多いんです。
医療費や老後の年金、失業保険など、生活を支える制度がまだ弱い国が多いです。特に日雇い労働やインフォーマルな職業に就いている人たちは、支援を受けられないケースも。
パキスタンやアフガニスタンでは地域紛争やテロの脅威があり、インフラ整備や教育機会が阻害されています。戦争や災害が、経済の足を引っ張ってしまうケースも少なくありません。
特に注目したいのが、子どもの貧困です。南アジアでは、貧困層の約半分が18歳未満と言われています。
農村部では、栄養失調やワクチン未接種が当たり前の状況になっていて、脳や身体の発達に影響が出る子どももいます。学校に通えなかったり、途中でやめる子も多く、貧困が次の世代にも引き継がれています。
インドでは、IT産業の推進や農業改革などで成長エンジンの多様化が進んでいます。これが貧困率の改善にもつながっているんですね。
貧困層への現金給付、LPG補助金、無料医療保険など、政府による支援策も少しずつ拡大されています。都市と農村の格差を埋めるための政策も模索中です。
世界銀行やUNDP、ユニセフなどが、教育、保健、衛生、水資源などの分野で支援を行っていて、持続可能な地域開発が少しずつ進んでいます。
スマホやネットを使った教育や仕事が進む一方で、農村ではそもそもネットがつながらないという問題も。デジタル・インクルージョンが課題です。
南アジアでは、女性の就労率が低いことも貧困の一因になっています。教育と雇用の機会を増やすことが、家計の安定と次世代の支援につながります。
南アジアの貧困問題は、経済成長だけでは解決できない、複雑で根深い課題なんです。とくに農村部の教育・保健サービスの遅れと、雇用機会とのミスマッチが貧困の連鎖を生んでいるんですね。だからこそ、政府の政策だけでなく、国際社会や市民社会が一体となって、持続可能な解決策を考えることが大事なんです。