
少し前まで「人口が多い=成長の原動力」とされていた東南アジア。でも今、その人口をめぐってさまざまな“悩み”が出てきているんです。実は東南アジア各国が抱える人口問題って、意外と多様で複雑。一部では出生率の低下が進み、逆に他の地域では都市への人口集中によるスラム化が深刻に…。
東南アジアの人口問題は、成長の裏にある「ひずみ」や「課題」の現れなんですね。本記事では、そんな東南アジアの少子化・高齢化・スラム化といった課題を国別・都市別に整理して、どういう背景があるのか、今後どんな影響が出るのかを分かりやすく解説していきます。
経済成長の“ボーナスタイム”だった人口ボーナス期を迎えていた東南アジア。でも、特に都市部では出生率の低下が目立ち始めています。
タイでは出生率がなんと1.0以下にまで低下。バンコクなど都市部では教育費や住居費が高騰し、若者たちが「子どもを持つ余裕がない」と感じているんです。シンガポールも同様で、国家的に出産・育児支援をしているのに、出生率は回復せず。
経済発展に伴って、女性の教育水準の向上や就労機会の増加も出生率の減少につながっています。ベトナムやマレーシアでは農村部と都市部で差があるものの、全体的には少子化の方向に進んでいるのが現状です。
一方、フィリピンやインドネシアでは、宗教的・文化的背景から家族単位が大きく、出生率も高め。ただし、都市部では緩やかに下がり始めており、将来的な少子化の兆しも見え始めています。
少子化とセットでやってくるのが高齢化。まだ「日本ほど深刻ではない」と思われがちですが、東南アジアでも着実にその波は広がっています。
この2国では、高齢者(65歳以上)の割合が10%を超えるようになってきています。特にタイは、今後20年以内に日本並みの高齢化社会になると予測されていて、介護や年金など社会保障制度の整備が急務とされています。
労働人口が減る中で、シンガポールでは外国人労働者への依存度が高まっています。でも一方で、移民政策には国民からの不満もあって、バランスがとても難しいんです。
経済成長に伴って多くの人が都市に流れ込みましたが、その結果、都市インフラが追いつかずにスラムが形成されるという課題も出てきています。
インドネシアのジャカルタやフィリピンのマニラでは、農村からの出稼ぎ労働者や低所得層が都市に集中し、非公式居住地(スラム)がどんどん拡大。上下水道や電気、教育機会も不十分なままです。
こうしたスラム地域では都市型災害のリスクも大きいです。たとえばジャカルタは地盤沈下や洪水の常襲地。インフラ整備が間に合わず、スラム住民が毎年のように被災しています。
急速な都市化が進むホーチミンやプノンペンでも、表面上は近代的に見えても、低所得者層の住環境や就業機会は不安定。都市と農村の二極化が進行中です。
人口動態に大きく影響するのが教育・雇用機会・ジェンダーの格差。特に若年層の将来への見通しが立ちにくいと、「子どもを持とう」という意識が下がってしまいます。
インドネシアやベトナムでは非正規雇用が多く、安定した収入を得られる若者が限られています。そのため、結婚や子育てに消極的になる傾向が強いんです。
都市部では大学進学率が上がる一方で、農村では学校設備や教師の質の問題もあって教育機会の格差が目立ちます。結果として、若者の都市流出が進み、農村の高齢化が加速する…という悪循環に。
教育や就労で活躍する女性が増えること自体はポジティブなんですが、それと同時に「出産・育児=キャリアの足かせ」となりやすく、少子化の一因になっています。
このまま放置しておくと、成長の原動力だったはずの人口が、逆に社会負担になってしまう恐れもあります。だからこそ、各国では少しずつ対策が動き始めています。
シンガポールやタイでは育児支援金や保育インフラ整備が進められています。ただし、それだけで「産みたい」と思える社会になるかはまだ未知数。
ジャカルタでは新首都建設(ヌサンタラ)など都市集中の分散化を狙う動きも。フィリピンでもインフラ改善や低所得層向けの住宅開発が徐々に進行中。
長期的には教育と雇用の安定が、出生率・高齢化・貧困をすべて和らげるカギ。そのために必要なのは、政府による制度の強化と、民間・国際支援との連携です。
東南アジアの人口問題は「成長の果実」と「その代償」がせめぎ合うリアルな現実なんです。出生率の低下、高齢化、スラム化、そして社会格差。それぞれの国で状況は違っていても、「豊かさの持続」のためには、今こそ長期的な視点での改革と連携が必要なタイミングに来ています。未来の東南アジアが“人に優しい社会”であるために、私たちも一緒に目を向けていきたいですね。