イエメンの特徴と成り立ち

イエメンの国旗(赤・白・黒の水平三色旗)

イエメンの国旗

出典:Wikimedia Commonsより

 

国の基本情報

国名 イエメン(Yemen)
※正式名称:イエメン共和国
首都

サヌア
※現在は暫定的にアデンが政府の拠点

人口 約3,400万人(2024年推計)
面積 約555,000平方キロメートル
公用語 アラビア語
通貨 イエメン・リアル(YER)
政治体制 共和制(内戦状態により分裂的支配)
主要宗教 イスラム教(スンニ派・シーア派混在)
国際的地位 深刻な内戦と人道危機の中にあり、国際社会からの支援を受けている
建国背景 1990年、北イエメンと南イエメンが統一してイエメン共和国となったが、内戦と政情不安が続いている。

 

イエメンって聞くと、どうしても「内戦」とか「貧困」っていうイメージが先に浮かんじゃうかもしれません。でも実は、アラビア半島の南端に位置し、古代から続く文明の十字路だった国で、“アラブの原風景”とも言える奥深さを秘めているんです。今回はそんなイエメンについて、地理や歴史、政治、そして現代の社会状況まで、まるっと紹介していきます!

 

 

イエメンの地理と基本情報

イエメンアラビア半島の南端に位置し、西は紅海、南はアデン湾に面しています。北はサウジアラビア、東はオマーンと国境を接していて、中東とアフリカ、インド洋をつなぐ海の要所でもあるんです。首都はサナア(※現在は内戦の影響で機能停止中)。人口は約3000万人。

 

自然と気候

  • 北西部は山岳地帯で、標高2000m超の地域もあり
  • 南部・東部は乾燥した砂漠地帯
  • 紅海沿いにはサナア旧市街など歴史的都市も点在

 

民族・宗教

国民のほとんどはアラブ系。宗教はイスラム教が主で、スンニ派とシーア派(特にザイド派)が混在。これが政治・武力衝突の背景にもなっています。

 

イエメンの歴史と成り立ち

イエメンは、実は中東でも最も古い歴史を持つ国のひとつ。古代には香料貿易の拠点として、地中海やインドとのつながりを持つ南アラビア文明が栄えました。

 

古代の香料の道

紀元前1000年ごろにはサバア王国(シバの女王の伝説で有名)が存在。乳香や没薬(もつやく)といった高級香料の生産と交易で栄え、アラビア最古の文明圏として知られています。

 

イスラム帝国とオスマン支配

7世紀以降、イスラム化が進み、アッバース朝ファーティマ朝の支配を経て、16世紀にはオスマン帝国の一部となります。ただし、山岳部では独立勢力が強く、中央の統治が及ばない土地も多かったんです。

 

南北分裂と統一

20世紀に入り、北イエメン(イマーム制)と南イエメン(社会主義国)に分裂。1990年に南北が統一されて「イエメン共和国」が誕生しました。でもこの統一は、宗派や部族、政治思想の違いを抱えたままの“むずかしいスタート”だったんです。

 

政治体制と国際的立場

統一後のイエメンは共和制ですが、部族社会・宗派対立・軍閥政治などが複雑に絡んでいて、政治の安定は難しかった…。そして現在は、事実上の内戦状態が続いています。

 

アラブの春と政変

2011年、アラブの春の波がイエメンにも到来。長期独裁を続けていたサーレハ大統領が辞任し、政権交代が行われましたが、その後反政府武装組織フーシ派が台頭。

 

現在の内戦構造

  • フーシ派(シーア派ザイド派):首都サナアを実効支配
  • 政府軍(スンニ派主体):南部を中心に活動
  • サウジアラビア主導の連合軍イランの支援が代理戦争的に関与

 

国際的にも分断が深く、人道危機が深刻化しています。

 

和平への模索

国連主導での和平交渉が続いているものの、決定的な合意には至っておらず、「世界最悪の人道危機」とも言われる状況が続いています。

 

 

イエメンの主な特徴一覧
  • アラビア半島南端に位置する歴史深い国
  • 古代は香料貿易で栄えた南アラビア文明の中心地
  • イスラム教スンニ派とシーア派(ザイド派)が混在
  • 20世紀には南北に分裂、1990年に統一
  • 現在はフーシ派と政府軍の内戦状態が続く
  • サウジとイランの代理戦争的側面もあり
  • 国連による和平仲介が継続中だが課題は山積

 

 

経済と社会の実情

かつてはコーヒーや香料で栄えたイエメンですが、現在の経済は非常に厳しい状態。内戦と封鎖、インフラ破壊がすべての産業に影響を及ぼしています。

 

資源と産業

  • 石油や天然ガスの埋蔵もありますが、採掘・輸送が困難な状態
  • 農業(コーヒー、キート)や漁業が地元経済の柱
  • 伝統工芸や市場文化も根づいていますが、経済的には崩壊寸前とも

 

飢餓と医療崩壊

  • 国民の7割以上が食料支援を必要とする状況
  • 医療インフラの破壊・物資不足で感染症や栄養失調が深刻
  • ユニセフや世界食糧計画(WFP)が支援活動を展開中

 

難民と教育の危機

  • 国内避難民が数百万人規模
  • 学校の閉鎖や教員不足により、子どもの学習機会が激減
  • それでも一部では地域の支援者による自発的教育活動も行われています

 

文化とアイデンティティ

混乱が続く今でも、イエメンの人々は豊かな文化と誇りを失っていません。古代から続く伝統、家族を中心とした生活、独自の建築と音楽は今も生き続けています。

 

サナア旧市街と泥レンガ建築

サナアやシバームには高層の泥レンガ造りの住宅が並び、“世界最古の摩天楼”とも呼ばれる景観が。ユネスコ世界遺産にも登録されています。

 

カートと日常文化

イエメンの独特な習慣に「カートの嗜み」があります。これは噛むと覚醒作用のある葉っぱで、社交や政治談義の場でよく使われています。

 

詩と音楽の国

イエメンは詩と口承文化がとても豊か。内戦下でもラジオやネットを通じた詩の発表が続いていて、希望と抵抗の象徴として愛されているんです。

 

イエメンって、混乱や貧困ばかりが注目されがちだけど、そこには何千年も続く文明の香りと、日々を力強く生きる人々の知恵と誇りがあるんです。今は大変な状況だけど、だからこそ、その背後にある“本当のイエメン”に目を向けることが大事なんじゃないかなと思います。