「中東」の由来(語源)|なんの略?別の言い方はあるの?

中東って言葉、ニュースや本ではよく見かけるけれど、そもそも「なんで中“東”って呼ぶの?」って思ったことありませんか?結論からいえば、「中東」という言葉はヨーロッパから見た位置関係に基づいていて、略語ではなく地理的な”相対表現”なんです。 しかも、他にもいろんな言い方があるんですよ。今回は「中東」という言葉の由来や言い換え表現を、わかりやすくひも解いていきます。

 

 

「中東」という言葉の由来とは?

「中東(Middle East)」という表現、実はかなり“ヨーロッパ目線”なんです。というのも、この言葉が広まったのは19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスをはじめとしたヨーロッパ列強がアジア方面に関心を強めていた時期。インドは「極東(Far East)」より手前、バルカン半島よりは遠い…ということで、ちょうど「中間の東」=Middle East と名付けられたというわけ。

 

イギリスの戦略的用語として登場

19世紀末、イギリスの海軍将校アルフレッド・セイヤー・マハンが、戦略上の用語として「Middle East」という言葉を使い始めたのが始まりとされます。彼は、ペルシャ湾からインド洋にかけての地域を特に重要視していて、その一帯を「中東」と位置づけたんです。

 

日本語訳はそのまま直訳

日本語の「中東」も、英語の "Middle East" を直訳したもの。戦後以降、日本でも外務省やメディアがこの言葉を使うようになって定着していきました。つまり「中東」は略語でも造語でもなく、“英語の地理的表現をそのまま持ってきた”というわけです。

 

「中東」ってどこからどこまで?

定義があいまいに思えるこの言葉、実際どの国を指すかは状況や文脈によってちょっと変わります。けれど、基本的にはアラビア半島+東地中海周辺+イランを含むエリアが「中東」と呼ばれています。

 

「中東」はヨーロッパからの視点

ヨーロッパ中心の地図で見ると、ちょうどイギリスやフランスから見て「中間あたりの東側」になるため、「中東」という表現がしっくりきます。でも、アジアやアフリカの視点から見るとちょっと不自然な呼び方なんですよね。

 

インドや中国から見たらどうなる?

たとえば中国から見れば、中東はむしろ「西の果て」。なので「中東」という呼び名は、使う人の立場によって意味が変わる、相対的な言葉だというのがポイントです。

 

「中東」の別の言い方ってあるの?

「中東」という表現は便利だけど、その背景には西洋中心の価値観が含まれているという指摘もあります。じゃあ、他にどんな呼び方があるんでしょう?

 

アラブ世界(Arab World)

アラブ諸国を指すときは、「アラブ世界」という言い方もよく使われます。アラビア語を話し、文化や宗教的なつながりの強い地域を示すときに使う言葉です。ただし、イランやトルコ、イスラエルのような非アラブ国家は含まれません。

 

イスラーム世界(Islamic World)

宗教を基準にして「イスラーム世界」と表現することもあります。イスラム教徒が多数派を占める国々を包括する言葉ですが、これも宗教色が強いため、使いどころに注意が必要です。

 

西アジア(Western Asia)

国際機関などでは、地理的に正確な表現として「西アジア(Western Asia)」が使われることもあります。たとえば国連の統計などでは、"Middle East" の代わりにこちらを使うケースもあります。

 

「中東」の言い換え表現一覧
  • アラブ世界(Arab World)
  • イスラーム世界(Islamic World)
  • 西アジア(Western Asia)
  • 中近東(Near and Middle East)
  • MENA(Middle East and North Africa)
  • 東地中海地域(Eastern Mediterranean)

 

呼び方ひとつにも、時代と視点が映る

「中東」という言葉は、単なる地域名のように見えて、実は国際政治や歴史観、宗教や文化と深くつながっています。

 

冷戦期以降の影響も大きい

アメリカやソ連が中東に介入しはじめた冷戦期以降、「中東」は単なる地理的名称ではなく、戦略的・政治的な意味合いを持つ言葉として定着していきました。石油や宗教、パレスチナ問題などもあいまって、「中東=複雑な地域」という印象が広まっていったんですね。

 

最近ではMENAという表現も

最近の国際機関や企業では、「中東と北アフリカ(Middle East and North Africa)」をまとめて「MENA」と呼ぶことも増えています。経済圏や開発支援の単位として使いやすいという理由からですが、これもまた“西洋から見た便利なラベル”と言えるかもしれません。

 

「中東」という言葉は略語ではなく、ヨーロッパから見た相対的な位置関係を表す表現なんです。つまり、「中東」という呼び名自体が、歴史や地理的視点、政治的関心の反映であって、時代や使う立場によって見え方が変わってくるんですね。呼び方ひとつとっても、それがどういう背景から生まれたのかを考えてみると、より深く地域を理解できるきっかけになると思いますよ。