
南アジアって聞くと、まず思い浮かぶのはインドという人が多いかもしれません。でも実はこの地域、インドだけじゃなくて多くの国と民族、宗教、文化がひしめく超バラエティ豊かな世界なんです。
つまるところ南アジアは「インド文明を中心に、宗教と帝国、そして植民地と独立の歴史が重なり合ってできた多層的な地域」なんですね。今回はそんな南アジアの特徴と、その成り立ちを地理・歴史・文化の面から見ていきましょう!
まずは南アジアの範囲をおさらい。アジアの「南」ってことだけど、具体的にどこを指すのかは意外と知られていないかも。
![]() インド |
![]() スリランカ |
![]() ネパール |
![]() パキスタン |
![]() バングラデシュ |
![]() ブータン |
![]() モルディブ |
![]() アフガニスタン |
一般的にインド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ブータン、スリランカ、モルディブの7か国が南アジアに含まれます。これらはすべてインド亜大陸に位置しています。
国連などはアフガニスタンを南アジアに分類しています。この国は経済協力機構(ECO)では中央アジア扱いであったりと、わりと所属が曖昧です。
北はヒマラヤ山脈、南はインド洋まで広がり、気候も高山帯から熱帯モンスーンまで多彩。山・川・海と自然地形もバリエーション豊かです。
インダス文明最大級の都市遺跡モヘンジョダロ
出典:Photo by Nikesh chawla / CC BY-SA 4.0より
南アジアの成り立ちを語るうえで外せないのが、インダス文明から続く宗教と思想の発展です。この地域は、人類の精神文化の「実験場」とも言えるんですよ。
インダス文明の成熟期(紀元前2600年〜1900年)の地理的範囲を示す地図
出典:Photo by Avantiputra7 / CC BY-SA 3.0より
インダス川流域で栄えたインダス文明(紀元前2500年ごろ)は、都市計画や文字文化を持つ高度な文明でした。その後、北方からアーリヤ人が移住し、バラモン教(後のヒンドゥー教)が誕生します。
この地域は仏教やジャイナ教、シク教なども生まれた宗教の十字路。それぞれが時代によって支配階層や民衆の間に広がり、今も各地で根強く信仰されています。
宗教だけでなく、政治的にも巨大な帝国が次々と興っては消えていったのが南アジア。その中で言語や建築、文学、法制度などの文化が深まっていきました。
ヒンドゥー・仏教・イスラム・シクなどが共存と衝突を繰り返しながら、一つの土地に重なり合ってきたのが南アジアの歴史。だからこそ、今もなお民族や宗教間の摩擦が根強い一面もあります。
1909年の英領インド帝国地図(『Imperial Gazetteer of India』より)
出典:British Indian Empire 1909 Imperial Gazetteer of India.jpg - Wikimedia Commonsより
近代になると南アジアはイギリスの植民地に組み込まれ、その後の独立と分離の歴史が現在の国境と社会構造を形づくっていきます。
19世紀、イギリス東インド会社→イギリス領インド帝国へと統合され、現在のインド・パキスタン・バングラデシュ・ミャンマーなどが一つの枠にまとめられていました。
1947年、インドとパキスタンが分離独立。その際に宗教(ヒンドゥー vs イスラム)の違いによる大規模な人口移動と暴動が発生。以降もカシミール問題などで対立が続いています。
現代の南アジアは、人口の多さ・IT産業・経済成長で注目される一方で、貧困・教育・環境・宗教対立など課題も山積みなんです。
IT、宇宙開発、映画など国際的な活躍が目立つ一方で、農村部や低カースト層の貧困も根深く残っています。
南アジアは、単に「インドを中心とした地域」ではなく、文明・宗教・帝国・植民地・独立運動といった複雑な要素が重なってできた多層的な世界です。それぞれの国が独自の課題と魅力を抱えながら、今もダイナミックに変化し続けている。そんな目で見ると、南アジアという言葉の重みも、少し違って感じられるんじゃないでしょうか。